SPACE 創立25周年の軌跡(6) まんざら亭 木屋町店

2012-03-05

1990年、軌跡(2)の「うふふ」のプロジェクトで一緒に仕事をさせていただいた、まんざら亭のオーナーより、御池木屋町下ルのビルの中に新店舗「まんざら亭 木屋町店」をOPENするためのデザインをご依頼いただきました。

うふふの仕事でいろいろとお話をさせてもらった時、大変独創的な発想をされている方だなと思っておりました。このお店も「お客様を玄関までお迎えにいき、お顔を覚えて靴を預かり、お席にご案内して、お帰りのときはスッと靴をお揃えする」という老舗料亭のようなサービスを、居酒屋レベルに取り入れたいというお話でした。今でこそよくあるお店ですが、当時は靴札をお渡しするとか、席番号の靴箱に入れるとか、お客様ご本人に直接応対して、心の通ったサービスをするという行き届いたお店は、まだまだなかったと思います。

そのお話から、それならあーしよう、こーしようと言葉のキャッチボールでお店が出来上がっていきました。デザインとしては、床をスキップフロアとし、リズミカルに奥の席へと続く動線、鴨川の床をイメージした浮座敷。照明は極力、直接視界に入らないよう、間接照明等で工夫しました。

でき上がった図面を説明させてもらいましたが、「おまかせします」の一言で、色やその他全てをまかせていただきました。信頼いただいたということでしょうが、でき上がるまでのプレッシャーは大変だったと記憶しております。創作和紙光壁は堀木エリ子氏、、ロゴマークや文字、絵は深井和子氏と、イメージを伝えておまかせできる方々に手伝っていただきました。

まんざら亭は西賀茂から始まりましたが、このお店を機に、まんざら亭が京都の、いや日本の居酒屋の業態のオピニオンリーダー的な存在へと発展していく足がかりとなったことは間違いないと確信しております。

独特な感覚で人々を魅了するお店を想像されるオーナーのお店造りのお手伝いができたことは、本当によい経験になり、デザインの組み立て方を発見できた想い出深いお店でありました。

杉木源三